関係人口に関する自主調査結果 第2回
「関係人口」となる人の特徴とそのきっかけ
~必要なのは経験価値のマネジメント~

1 第1回「関係人口の総量」の振り返り

<第1回コラムの詳細は以下>

https://www.intage-research.co.jp/lab/column/20181019.html

 2015年度(平成27年度)から取り組みが進められてきた「まち・ひと・しごと創生総合戦略」(地方創生総合戦略)も、来年度が5か年の計画期間の最終年度となる。「まち・ひと・しごと創生総合戦略」では、少子化対策や地方部から都市部への人口流出の抑制を政策目標に掲げてきた。もちろん、いくつかの地域では、特徴的な事例や効果が見られるものの、年間10万人以上が地方圏から東京圏へ転入しているという状態は依然続いている。このような中で新たに注目されているのが本コラムのテーマである「関係人口」である。

 前回のコラムでも確認したように、「関係人口」という言葉はやや普及してきている。2018年度には関係人口に関わる事業も一部地域で実施されているが、交流人口に替わる新たな人口としての「関係人口」はどの程度存在するのか、その内容はどのようなものなのかということは明らかにされていない。そのため、本調査ではこれまでの調査研究や書籍などで示されている要素を参考にして、関係人口の総量の抽出を試みた。 

 結果、本調査における関係人口の総量は35.4%と3人に1人程度はいずれかの地域の関係人口となっていることが明らかになった。

                  <図表1> 本調査における関係人口の総量

図表1.png

 また、関係人口の内訳は次の通りである。

               <関係人口に関わる関心・関与の内容>

                                    

                <図表2> 関係人口の内訳(複数回答)

                図表2.png

2 「関係人口」となった人の特徴ときっかけ

2-1 「関係人口」となった人の特徴

1)居住地域

 以下は、「関係がある居住地以外の地域を持つ人」の居住地を示している。<図表3>によれば、居住地以外の関係する地域がある人は、関係地域がない人と比べて「東京23区」、「東京23区外首都圏」に多く住んでいることが分かった。また、首都圏、名古屋、京阪神、福岡など大都市以外の地域に住んでいる割合が、関係地域がない人に比べて低いことも分かっている。

               <図表3> 関係先のある人の居住エリア

図3(改).PNG

2)地域活動への参加

 <図表4>は「関係先の地域がある人」の現在行っている地域活動の参加状況である。関係する地域を持つ人はそうでない人に比べて地域活動を行っている割合が7.6pt高い。特に町内会・自治会や、地域でのイベント開催・参加への参加率が高い点が特徴的である。

           <図表4>現在取り組んでいる地域活動(複数回答)

図表4.pngのサムネイル画像

3)志向するライフスタイル

 「関係人口」となった人は、どのようなことに興味・関心を持っているのだろうか。

 関係する地域がある人は、特に「新しいことに挑戦してみたい」、「モノよりも経験にお金をかけたい」の割合が、関係する地域がない人と比較して高い(15pt差以上)。また、多少高くても環境、社会、地域への配慮がなされた倫理的な消費を行うことや、複数の仕事や居場所を持つことにも興味がある点について差が大きいことも、特徴の1つとなっている。

             <図表5> 関係先のある人の志向性
               (あてはまる+まああてはまるを合計した割合)

   図5(改).PNG

4)旅行の状況

 旅行については、関係する地域を持つ人は関係する地域がない人に比べて「日帰り旅行」や「宿泊旅行」に「出かける方だ」と思う人の割合が約1.5~2倍ずつあり、居住地とは違う場所に出かける人が多い。

       <図表6> 日帰り・宿泊旅行へのお出かけ状況  

  図表6.png

 

 また、好ましい旅行内容として、全体では「話題の観光名所を見る」が最も高いが、関係先の地域がある人は、次いで「自然環境の中でリラックスする」(57.5%)が「観光名所」に次いで高く、「地域の暮らしを体験する」、「地域の人に、その地域を案内してもらう」などの割合も10%を超え、関係先がない人よりも高くなっている。

           <図表7> 意向する旅行体験(複数回答)

図表7.png

2-2 「関係人口」となったきっかけ

 続いて、関係人口となった人は、どのようなきっかけで「関係人口」となったのか。「関係のある地域ができたきっかけ」の回答状況は<図表8>の通りである。

 最も多いのは、「親しい人がその地域の出身や、かかわりのある人だった」で33.9%、次いで「その地域に旅行したことがあった」が31.2%、「その地域に住んでいたことがあった」(24.5%)、「その地域で好きな/共感する場所やお店を見つけた」(21.7%)と続いている。一方で、「雑誌の特集記事」や「テレビや動画サイト等で関連するコンテンツを見た」などの回答は1割を下回っており、関係人口となる人はマスメディア等を通じた地域の情報だけではなく、自身の経験に基づくものや親しい人からの影響がきっかけとなり関係人口となることが考えられる。

           <図表8>「関係」のきっかけ(複数回答)図表8.png

3 「関係人口」創出への視点

3-1 地域との"関係"の創出

 第2章までで、「関係人口」となった人の特徴ときっかけが明らかになった。この結果より、今後も関係人口を維持・増やしていくにはどのような取り組みが考えられるのか考察する。

 「関係人口」となるきっかけには、「自分自身または近しい人がその地に所縁がある」、「旅行などで自分自身がその地を経験した・人や場所に出会った」という大きく2つの要因が上位に挙がっており、地域に所縁がなくても旅行などをきっかけとした関係人口の創出も可能であることが明らかになっている。

 アプローチの考え方については、関係人口となる人の志向性として「新しいことに挑戦してみたい」や「モノよりも経験にお金をかけたい」といった特性がみられるため、こうした志向がある人に対して地域性を踏まえた「経験価値」を提供することが、その地域のファンを増やしていくためのキーワードになると考えられる。

 地域性を踏まえた経験として考えられるものとしては、例えば以下のようなものが考えられる。

 こうした考え方に基づき、地域のファンづくり(「地域との"関係"の創出」)を進めていくことが、関係人口を増やしていくためのアプローチの1つとして考えられる。

3-2 地域との"関係"の維持と向上

 一方、すでに地域と何らかの関係を持っている人に対しては、その関係性をより強く持続的なものにするための働きかけ(「地域との"関係"の維持と向上」)が必要だと考えられる。移住だけに限らないことが関係人口の特徴であり、その関わり方も様々であることは第一回目のコラムで触れてきた。関係人口では地域を応援するといった関わり方も、一つのあり方だが、関わりを一時的なものとするのではなく、継続した関係性を構築・維持していくことが重要である。また既にある関係性を活用することでより強い繋がりや地域への愛着とすることも可能であると考えられる。

 アプローチの視点としては、自身の出身地から親しい人の関わりがある地域、またはふるさと納税の納付先など、関わりの強弱を問わず、一度関わりを持ったことをきっかけに地域をより詳しく知ってもらい、関わりを増やしていく中で持続的なファンになってもらう流れをつくることが考えられる。

 持続的なファンとなってもらうための仕組みとして、例えば以下のようなものが考えられる。

 ここまで第1回コラム、第2回コラムを通して関係人口の総量と内訳及び地域との関連性、また関係人口の特徴・きっかけ、関係人口を創出するためのアプローチの視点等について触れてきた。

 第3回では今回のコラムで提議した、仕組みに着目し、地域での取組みやその目的・効果について紹介していく。

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執筆

株式会社インテージリサーチ

公共サービス事業部ソーシャル事業推進部

研究員 櫻木祐輔(さくらぎ ゆうすけ)

研究員 花田洋平(はなだ ようへい)

監修

淑徳大学 学長特別補佐
地域連携センター長
コミュニティ政策学部教授

矢尾板俊平

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