関係人口に関する自主調査結果 第3回
「関係人口」創出に向けた取組の状況(1)
~「「関係人口」モデル事業」を通じた全国各地での展開~

1 第2回「「関係人口」となる人の特徴とそのきっかけ」の振り返り

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<第2回レポートの詳細は以下>

https://www.intage-research.co.jp/lab/column/20190212.html


 2015年度(平成27年度)から取り組みが進められてきた「まち・ひと・しごと創生総合戦略」(地方創生総合戦略)も、来年度が5か年の計画期間の最終年度となる。「まち・ひと・しごと創生総合戦略」では、少子化対策や地方部から都市部への人口流出の抑制を政策目標に掲げてきた。もちろん、いくつかの地域では、特徴的な事例や効果が見られるものの、年間10万人以上が地方圏から東京圏へ転入しているという状態は依然続いている。このような中で新たに注目されているのが本コラムのテーマである「関係人口」である。

 第1回のレポートでは、アンケート調査により、「関係人口」の総量の抽出を試みた。この結果、本調査における「関係人口」の総量は35.4%、と約3人に1人はいずれかの地域の「関係人口」となっていることが明らかになった。この結果を踏まえ、第2回のレポートでは、「関係人口」となった人の特徴や、「関係人口」となったきっかけを考察した。

 特徴については、「旅行や地域活動を活発に行っている。また、新しいことに挑戦したりモノより経験を重視する人」とする人物像が示された。

 きっかけについては、「親しい人がその地域の出身や、かかわりのある人だった」、「その地域に旅行したことがあった」、「その地域に住んでいたことがあった」等が上位に挙がり、マスメディア等を通じた情報だけではなく、自身の経験に基づくものや親しい人からの情報や影響がきっかけとなりやすいことが示唆された。

 これらを踏まえ、今後も関係人口を維持・増やしていくための取組として、①地域のファンづくり(「地域との"関係"の創出」)とともに、②すでに地域と関係のある人に対し、その関係をより強く持続的にするための働きかけ(「地域との"関係"の維持と向上」)が必要である、と考察した。

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 それでは、各地域では具体的にどのような取組により「関係人口」と呼べる人を創出しているのか。第3回レポートでは、総務省で2018年度に実施された「「関係人口」創出事業」(以下、モデル事業)で採択された事業を対象として、具体的に「関係人口」の創出がどのように行われているのか、その取組の現状について考察する。


 なお、第1回、第2回レポートにおいては、アンケート調査により、3人に1人が「関係人口」であると示したが、これらはモデル事業により創出される「関係人口」とは区別すべきであることから、「関係者」と再定義するものとする。

2 「関係人口」創出に向けた取組(総務省「「関係人口」創出事業」)の展開

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2-1 総務省によるモデル事業の実施

 2018年度、総務省では、「関係人口」創出に向けた取組を行う地方公共団体を支援する、「「関係人口」創出事業」(以下、モデル事業)を実施した。これは、地方公共団体が行う、地域と継続的なつながりを持つ機会やきっかけを提供する取組をモデル事業として採択し、1年間の取組を踏まえ、効果を検証するものである。


 モデル事業では、「関係人口」として地域と継続的なつながりを持つ機会・きっかけを提供する取組の種類として、3パターンを定義した上で、地方公共団体に対する公募を行っている。(<図表1>参照)

<図表1> 地域と継続的なつながりを持つ機会・きっかけを提供する取組の種類

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2-2 各モデル団体による取組の状況

 2019年2月に開催された、「「関係人口」創出事業」最終報告会での各団体からのプレゼンテーションおよび、モデル事業の報告書「平成30年度「「関係人口」創出事業」モデル事業調査報告書」等公開されている情報を基に、各モデル団体による取組の状況を<図表2><図表3>に整理した。

 パターン()①(既にその地域との関わりを持つ人)には、<図表2>に示す13団体に加え、<図表2>のうち3団体(横手市、天栄村、天草市)が該当しており、取り組みの数としては最も多い。該当する計16団体中、北海道、住田町を除く14団体では、モデル事業の前身となる取組や、「関係人口」創出の"足がかり"となる取組があることが確認できた。具体的には、「ふるさと住民票」の発行(日野町、三木町)や、「ファンクラブ組織の運営」(柏崎市、西条市、肝付町)等である。

 パターン()②(ふるさと納税の寄附者)には、<図表3>に示したうちの8団体が該当する。各団体において、ふるさと納税は「重点政策である子育て少子化対策の財源」(上士幌町)、「外部人材との関わりが最も大きい事業」(最上町)、重要な取組として位置づけられている。

 パターン()(これから地域との関わりを持とうとする人)には、<図表3>に示したうちの9団体が該当する。パターン()は、()と異なり、現在地域と関わり・つながりがない人を、まず事業の参加者として獲得する必要があり、パターン()①、パターン()②に比べると、創出のハードルは高いと言えそうだ。しかし視点を変えると、パターン()の各団体は、「関係人口」創出のターゲットとなる人材を、特定の属性(パターン()でみられるような、「ファンクラブの登録者」や「過去に何らかの事業に参加したことがある人」)にとらわれず、幅広く募集することができる。

 このこともあり、パターン()の団体のうち一部には、パターン()に比べると、「地域の活性化に資する何らかのスキルや経験を有する人材」を、「関係人口」創出のターゲットとして意識している傾向がみられる。具体例として、「都市計画やまちづくり」、「webでのPR」等(いずれも福井県)、「ICTや情報発信に関するスキル」(福山市)、「ビジネスプロデュース」、「プロジェクトマネジメント」、「コーチング、チームビルディング、ファシリテーション」等(いずれも南小国町)、等である。

<図表2> 各モデル団体の取組の概要(1)

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<図表3> 各モデル団体の取組の概要(2)

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3 「関係人口」の取組状況に関する考察

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 以下では、「モデル事業」を通じた「関係人口」創出に向けた全国での取組の状況について、現状や、浮かび上がってきた課題等を考察する。

3-1 「関係人口」の創出状況

 関係人口創造事業では、事業の実施によって主に次のような実施事項と成果が報告されている。

 ・イベント等の参加者や、クラウドファンディングの寄附者等、地域と繋がろうとする人や、地域と繋がろうとする人の"データベース"の構築

 ・地域と繋がろうとする人と、地域課題とのマッチングに向けた仕組みづくり

 ・「関係人口」創出に向けた地域の取組体制や、人材の受入態勢の構築、及びその体制面での課題等の把握

 「「関係人口」創出事業」に採択されたモデル団体が取り組む事業はすべて、「関係人口」の創出を目的とした取り組みだが、「関係人口」は、交流人口でもなく移住者でもなく、外部から継続的に地域に携わる人々であることを鑑みると、多くのモデル団体では、現段階では、「関係人口」の"候補者"(イベントの参加者等)発掘が成果という状況であると考える。 

 これらの"関係人口の候補者"が地域と外部から様々な形で関わる「関係人口」となるには、多くの自治体で、継続的な取組が必要であると考えられる。

3-2 「関係人口」創出に向けた取組体制

 3つの事業パターンに共通しているが、多くのモデル団体では、「関係人口」の創出に向け、以下のような事業を展開している。

 ・"関わりしろ"の確保:セミナーの開催、クラウドファンディング型ふるさと納税の応募、webでの告知等

 ・参加者が地域について学ぶ、知る:現地ツアー、セミナー、ワークショップ等

 ・地域と繋がる活動の実践:現地での体験に関する事業

 これら事業の展開にあたり、その企画の立案企画の実行や、事務局機能は各モデル団体や事業に関係する外郭団体、地域おこし協力隊の隊員、委託を受けたコンサルタント等が担っている。一方、一部のモデル団体では、「関係人口」創出に向けた継続的な取組を行う上で、今後、これらの機能を「関係人口」である人たちに担ってもらいたいとする考え方がみられる。

 この考え方について、報告会等で具体的に言及があったモデル団体は一部である。しかしながら、「関係人口」の創出の目的の一つに、「地域の担い手の確保」があることも踏まえると、「関係人口」がその創出事業の担い手となる(≒事業が"自走"する)ことは、事業のあり方として望ましい状態にあると言える。

 モデル団体の中では、肝付町(パターン(1)①)は既にこの視点を意識しており、平成30年度のモデル事業の成果の一つに、「今後、肝付町の「関係人口」創出に関する取組を、自発的に取り組んでくれそうな"コアな「関係人口」の候補者"が抽出できた」ことが挙げられている。

3-3 「関係人口」創出のターゲット


 第1回レポートにおいて紹介した、「月刊ソトコト」編集長の指出一正は、「関係人口」の"候補者"イメージとして、以下の人物像を示している。

"自発的には田舎に行かない人や、日常に「もやっと」している人、ダイレクトに幸せを感じない人。"

(総務省「関係人口セミナー」(2018年8月)でのパネルディスカッションにおける発言より)

 一方、各モデル団体のモデル事業に参加し、「関係人口」の"候補者"として抽出された人の属性をみると、元々(もしくは、かつて)、移住を検討していた人」や、「移住を視野に入れているファミリー層」が多かった、とする報告があり、当初想定していた「関係人口」の"候補者"像から、新たな広がりがみられる。

 このことを踏まえ、各自治体等では、「関係人口」の定義や人物像について再定義しながら、今後、取組を進めていく必要があると考えられる。

3-4 「関係人口」の成果指標の整理

 いくつかのモデル団体では、本事業での取組内容や成果指標において、「移住者の確保」が強く意識されている状況が見受けられる。

 ・取組内容:「移住体験ツアー」等が盛り込まれている(パターン()①のモデル団体)

 ・成果指標:「将来的な移住促進につなげる」等が示されている(パターン()①のモデル団体)

 多くの地方自治体にとり、移住・定住者の獲得は、「究極的な目標」だとも言える。しかしながら、「定住人口とも、交流人口とも異なる、多様な関わり方」に着目している「関係人口」の趣旨を考慮すると、移住・定住とは区別された、新たな成果指標を掲げた上で取組を推進していく必要があると考えられる。

3-5 「関係人口」の創出に向けた課題

 各モデル団体より報告された、事業を通じた課題のうちの一つに、以下の指摘がある。

 ・地域や、取組の認知不足、周知不足等により、取組への参加者やふるさと納税の寄附が思った以上に集まらなかった(パターン()①のモデル団体、パターン()②のモデル団体等)。

 第1回レポートにおいて紹介したアンケート調査の結果では、「関係先」として挙げられた地域(都道府県)の上位は「東京都」5.7%、「沖縄県」3.0%、「北海道」2.6%、「福岡県」「京都府」がいずれも2.1%であった。また、その具体的な地域(市区町村等)には、各都道府県の主要都市や、観光地として有名な地域が挙げられる傾向にあった。

 これらを踏まえると、今後、各地域が「関係人口」の創出に向けた取組を進めていくには、地域と継続的なつながりを持つ機会やきっかけを提供する、地道な取組を継続していくことに加え、中長期的には、地域の認知度の向上やブランディング施策に取り組む必要があると考えられる。

 次回、最終回となる第4回のレポートでは、「モデル事業」を実施したモデル団体のうち3団体に対し、「好事例」だと考えられる団体の取組について、ヒアリング調査等により、より深く掘り下げる。

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執筆

株式会社インテージリサーチ

公共サービス事業部ソーシャル事業推進部

研究員 櫻木祐輔(さくらぎ ゆうすけ)

研究員 花田洋平(はなだ ようへい)

監修

淑徳大学 学長特別補佐 地域連携センター長 コミュニティ政策学部教授

矢尾板俊平

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