ビッグデータ&リアルタイム記録を活用した新たな自治体観光マーケティング

株式会社インテージリサーチは、自主企画調査として『モバイル空間統計®』※1と『レコーディングリサーチ』※2を活用し、「観光資源への来訪実態把握」と「観光資源の芽」を見つけるための自主企画調査を埼玉県川越市を対象に実施いたしました。

PICK UP

  • 『モバイル空間統計』からは、アンケート調査を実施せずとも年代別の滞在場所の差や居住地による流出入時間の差異を可視化することができました。
  • 『レコーディングリサーチ』では、観光名所以外のおすすめポイントを抽出することができました。
調査方法調査1:モバイル空間統計 調査2:レコーディングリサーチ
調査地域調査1:川越市内対象エリア(500mメッシュ×7エリア) 調査2:埼玉県、東京都、神奈川県(横須賀市)※川越市観光アンケート調査より、来訪者が多いと考えられる地域を任意に選出
調査対象者調査1:川越市外の居住者かつ、調査対象期間に調査地域に滞在した人 調査2:プレミアクラブ会員、調査対象期間に川越への来訪予定がある人
サンプル構成調査1:- 調査2:79サンプル(川越市内23、川越市外56)、478レコード(川越市内266、川越市外212)
調査期間調査1:2014年11月 調査2:2015年2月28日~3月28日
調査内容調査1:- 調査2:川越で立ち寄った場所、その場所のおすすめ度、その場所の写真、コメント、買ったもの
調査実施機関調査1:- 調査2:株式会社ドコモ・インサイトマーケティング
分析者銭谷 恭子(ソーシャル事業推進部研究員)

はじめに

現在、政府では2020年の東京オリンピックに向けて、主に訪日外国人についてメジャーで人気のあるスポット、いわゆる「ゴールデンルート」以外の多様な地域における来訪者数の増加を目指しています。また、日本国内の旅行においても志向性の多様化にともない、様々な取り組みを通じて新たな観光資源の発掘、再構築が行われています。近年では、路地裏散策や、各地の聖地巡礼、トンネルや鉄橋など、従来の「観光資源」とは異なる資源が発掘・注目され、人気を集めています。このような、まちにとって魅力的な「観光資源の芽」は、どうすれば見つけることができるのでしょうか。
本分析では、モバイル空間統計とレコーディングリサーチを活用し、小江戸と称され蔵造りの町並みが今も残る埼玉県川越市を事例として「観光資源への人の来訪状況実態把握」と「観光資源の芽」を見つけるための調査方法の有効性を検討しました。

分析結果のポイント1

『モバイル空間統計』からは、アンケート調査を実施せずとも年代別の滞在場所の差や居住地による流出入時間の差異を可視化することができました。

以下【図1】は、川越市の中心部を観光エリア5つと駅前エリア2つに分けて、調査対象期間に川越市外からの来訪者が川越市のどこに多く滞在しているかを年代別に表したものです。図からは、60・70代は各エリアで滞在人口が多く、様々な場所を周遊していることがうかがえます。一方、10・20代は駅前エリアでの滞在人口が他年代より多く、周遊エリアが狭いことがうかがえます。

【図1】川越市への来訪者は、どこに多く滞在しているか

fig4-01.jpg

※図表内、各年代のサンプル数は、各エリア滞在の延べ人数(最大値)を合計した数値

以下【図2】は、居住地(発地)別の調査対象エリアに滞在した人数をグラフ化したものです。
川越市に比較的近い東京都からの来訪者は、9時から10時、11時となだらかに増えていき、17時になってもピーク時と比較して約60%の人が滞在しています。このことから隣県である東京からの来訪者は川越市の様々な時間帯を楽しんでいることが推測できます。

一方、神奈川県からの来訪者は10時に滞在者が増えた後、ピークが12時と14時双方に現れ、17時には滞在者が大きく減少します。このことから、隣県ではない神奈川県からの来訪者は比較的短時間の滞在で、集中して来訪している様子が見て取れます。

【図2】居住地によって、川越市への滞在時間はどのように異なるのか

fig4-02.jpg

(参考)モバイル空間統計のデータ抽出エリア(地図内の7か所)

area_4.jpg

分析結果のポイント2

『レコーディングリサーチ』では、観光名所以外のおすすめポイントを抽出することができました。

以下【図3】は、川越来訪時、リアルタイムでおすすめポイントを記録した数の集計結果です。20代では、他の年代と比較して、観光エリア以外でのおすすめポイントが挙がるといった傾向が見られました。
また、【図4】のように具体的なリアルタイム記録を活用することにより、観光資源の芽の発見に役立てることが可能です。記録からは、実際のおすすめポイントが様々な場所にまたがり、かつ、有名な観光名所以外の多くのおすすめポイントの情報も得ることができました。

【図3】年代別おすすめポイント構成比(市外からの来訪者、駅前商店街・観光エリアコメント者)

fig4-03.jpg

【図4】市外からの来訪者20・30 代女性が訪れた場所とコメント

fig4-04.jpg

※1「モバイル空間統計」とは
モバイル空間統計とは、株式会社NTTドコモの携帯電話のネットワークのしくみを使用して作成される人口の統計情報です。携帯電話6,600万台※aの運用データを基にした新たな人口統計になります。
日本全国の1時間ごとの人口分布を、24時間365日把握することができます。
性別・年齢層別・居住地域別人口構成を、国内人口に加え、訪日外国人※bについても知ることができます。

※a法人名義の契約データ等を除去して推計しています。

※bドコモ独自推計により、2014年現在約250万台になります。対象エリアは市区町村・都道府県での調査になります。
年代・性別の提供はございません。居住地は国別になります。
「モバイル空間統計」は株式会社NTTドコモの登録商標です。
モバイル空間統計の提供元:
株式会社ドコモ・インサイトマーケティング(http://www.dcm-im.com/)

転載・引用について

本レポートの著作権は、株式会社インテージリサーチが保有します。調査レポートの内容の一部を転載・引用される場合には、事前に弊社までご連絡ください。
お問い合わせの際には、以下の2点をお知らせください。

  • 転載・引用したい調査レポートとその範囲
  • 用途・目的

なお、内容によっては、転載・引用をお断りする場合がございます。

転載・引用に関する注意事項

転載・引用の際には、出所として弊社名(株式会社インテージリサーチ)及び調査名称の明記をお願いいたします。
以下の行為は禁止いたします。

  • データの一部または全部を改変すること
  • 本レポートを販売・出版すること
  • 出所を明記せずに転載・引用を行うこと

モニター募集

モニター募集は、現在新型コロナウイルスの影響により募集を一時中断しております。