介護離職に関する自主企画調査 5年以内に4人に1人が「仕事と介護の両立」の時代に

株式会社インテージリサーチ(本社:東京都東久留米市、代表取締役社長:井上孝志)は、自主企画調査「介護離職に関するアンケート」を実施しました。全国の35~59歳の被雇用者(会社員・公務員など雇用されて働いている人)の男女2万人を対象にしたインターネット調査で、仕事と介護の両立の実態を尋ねたものです。

調査結果のポイント

  • 35~59歳の被雇用者(会社員・公務員、正規・非正規含む)のうち、「現在、家族の介護を担っている」人は5.8%。5年以内に担う可能性がある人を含めると、「ほぼ4人に1人が仕事をしながら介護を担う時代」がやってくる。10年後には2人に1人となる可能性もあり、男女を問わない結果となった(図表1-1)。
  • 現在、家族の介護を担っている人の半数以上は「公的な介護サービス」を利用していない。また、1割の人は家族などの支援がなく、孤独に介護と向き合っている(図表2)。
  • 現在何の支援も受けていない人の11.5%は「肉体的・精神的に疲れがたまり、このまま両立を続ける自信はない(仕事を辞めることを考えている)」と回答しており、「介護離職」寸前の状態であると考えられる(図表3)。
  • 介護離職を考える人のうち、8割は条件が整えば仕事を辞めずにいられると考えている。施設入所などの介護サービス利用を求めると同時に、柔軟な働き方によって、介護者自身の心と体をケアするゆとりを求めている(図表4)。

調査概要

調査方法インターネット調査
調査地域全国
調査対象者インテージ・ネットモニター 全国35歳以上59歳までの男女個人
サンプル構成平成29年12月労働力調査に準ずる(性別×年代別×業種別)設計数20,000サンプル
調査期間2017年3月30日(木)~3月31日(金)
調査内容仕事と介護の両立について 介護の実態 等
調査実施機関株式会社インテージリサーチ
分析者土屋 薫 (公共サービス事業部)

考察

2025年には団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)となり、国民の5人に1人が75歳以上という「超・超高齢社会」を迎えます。「一億総活躍社会」に向けて、今後ますます共働き世帯が増えていく中で、仕事と介護の両立は避けては通れない問題です。平均介護期間は4-5年といわれており、今回の調査でも半数弱の人は3年を超え、「10年以上」という人も1割見られました。介護は一時的に仕事を休んで対応できるものではなく、長期にわたって両立するにはどのようにしたらよいか、社会全体で考えていく必要があります。

2000年4月1日に介護保険制度が始まって17年経ち、「介護の社会化」は定着しているはずですが、今回の調査結果では半数の人が公的な介護サービスを利用していないことがわかりました。まだ要介護度が低く、制度の対象外というケースや医療機関に入院中なども考えられますが、中には重い介護度にも関わらず制度利用に至っていないケースもあると推測されます。共に支え合う家族がおらず、社会の支援が得られない人ほど、「介護離職」寸前の状態にあり、制度の利用浸透が急がれます。

介護離職を考えている人の半数が「要介護者が施設等に入所し、自宅で介護をする必要がなければ続けられると思う」と答えています。一方で特別養護老人ホームなどの入所待機者数は増加の一途をたどり、また、今後の介護保険財政の逼迫(ひっぱく)をかんがみると、安易な施設数の増加は望めません。

働きながら介護を続けるために、まずは、働き方の柔軟性が求められています。

調査結果の詳細

5年後には働く人の4人に1人が、仕事と介護を両立しなければならない時代に

35~59歳の被雇用者(会社員・公務員、正規・非正規含む)に、今後家族として介護を担う立場にあるかを聞いたところ、「現在、家族の介護を担っている」のは5.8%、「近い将来(1-2年くらい)には担っている可能性がある」のは5.3%であり、約1割の人が仕事と介護の両立に直面していることがわかります。「将来的(3-5年くらい)には担っている可能性がある」を含めると、その割合は24.4%とほぼ4人に1人となります。また、10年後まで広げると2人1人はその可能性があると答えています。

以下の図に示すように、この割合は男女でほぼ同様の傾向があり、「仕事と介護の両立」という問題が、女性だけの問題ではないということがあらためて確認できます。

図表1-1 「家族の介護を担っている/担う可能性のある」人の割合(性別)

問 あなたは現在または今後、ご家族として介護を担う立場にありますか。(回答は1つ)
(仮に被介護者の方が施設に入所されるとしても、ご自身が関与される場合は、介護を担うとお考えください。)

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なお、年代別に同結果を見ると、『55-59歳』では既に1割以上の人が、仕事を続けながら家族の介護を担っていることがわかります。

図表1-2 「家族の介護を担っている/担う可能性のある」人の割合(年代別)

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半数以上は「公的な介護サービス」未利用。1割は「支援は何も受けていない」

現在、既に家族の介護を担っている人に、介護や家事を支援してくれる人の有無を尋ねたところ、11.7%の人は「支援は何もない」と答えており、孤独な介護の様子がうかがえます。

「同居の家族」が58.3%、「別居の家族」が30.0%と多くの人は家族で支え合いながら介護をしている様子がわかります。一方で、「公的な介護サービス」に支援されていると答えた割合は46.6%にとどまっています。これは、半数以上の人は家族らの中で介護を抱え込んでおり、社会的な支援が十分に受けられていないとも言えます。これらの結果は、介護度別でも同様の傾向が見られます。

図表2 支援の有無(性別)

問 あなたには介護や家事を支援してくれる人はいますか?(回答はいくつでも)

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【参考】被介護者の介護度別結果

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支援を何も受けていない人の1割は、仕事を辞めることを考えている

現在、仕事と介護を両立している人たちの多くは、「要介護者の状態がこれ以上悪くならなければ、このまま続けていけると思う」(51.6%)、「介護保険制度や民間のサービス等をうまく使うことができれば、このまま続けていけると思う」(42.9%)と答えています。しかし、現在何の支援も受けていない人の11.5%は「肉体的・精神的に疲れがたまり、このまま両立を続ける自信はない(仕事を辞めることを考えている)」と回答しており、「介護離職」寸前の状態であることが推測されます。

図表3 仕事継続の自信(支援の有無別)

問 あなたは、このまま仕事と介護を両立させて続けていく自信はありますか?(回答はいくつでも)

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ベース:現在、家族の介護を担っている人(n=1,044)

※支援あり=図表2で、「同居の家族」~「その他」までのいずれかの選択肢を選択した人
※支援なし=同じく図表2で「支援は何もない」を選択した人

柔軟な働き方で、介護者自身の心とからだをケアするゆとりを

条件に関わらず介護に専念したい人は15.9%で、8割以上の人は条件が整えば仕事を辞めずにいられると考えています。最も多い回答は「要介護者が施設等に入所し、自宅で介護をする必要がなければ続けられると思う」で48.3%でした。次いで「介護から離れて気分転換したりやからだを休ませるなど、自分自身の心とからだをケアできれば続けられると思う」(29.0%)と「公的介護保険サービスが十分に受けられれば、仕事を続けられると思う」(28.3%)が拮抗(きっこう)しています。

また、「在宅勤務やフレックスタイム制度など、柔軟な働き方ができれば続けられると思う」(20.0%)、「短時間勤務や職掌転換などで仕事の負荷が軽くなれば、続けられると思う」(16.6%)といった働き方の変化によって、辞めずに済むという意見も見られました。

施設不足などにより、入所が難しい可能性も十分に考えられる現状においては、介護との両立が可能な働き方に変えていくことで、介護者自身の心とからだをケアすることが求められています。

問 どのような条件があったら仕事を辞めずに続けられると思いますか(回答はいくつでも)

図表4 仕事を辞めずに済む条件

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ベース:現在、介護を担っている人のうち「仕事を辞めることを考えている人(46人)と
今後5年以内に介護を担う可能性がある人のうち「仕事を辞めて、介護に専念すると思う人(99人)の計(n=145)

参考データ

問 あなたが介護を担うようになって、どのくらいの期間が経っていますか。途中で中断がある場合は、延べ期間でお答えください。(回答は1つ)

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問 あなたが介護をなさっている方の要介護度は、どの程度ですか。(回答は1つ)

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